森の日記

見たこと、知ったこと、感じたこと。

イタリアの判断に、考えたこと。

ちょっと前に(ちょうどいまから40日前)、こんな記事を書いたんだけど、それはなんでかというと、当時、ちょうど現実にそんなことがヨーロッパで起きていたからだった。

 

mori-kei05.hatenablog.com

 ドイツのNGO「シー・ウォッチ」(※シー・シェパードではない)の救助船が、リビア沖でゴムボートに乗る移民たち53人を救出したのだけど、最寄りのイタリア(ランペドゥーサ島)への入港が拒否され続けた。船は数週間沖合で停泊を続けたあと、許可の下りないまま港に入り、31歳の女性船長、カロラ・ラケッテ(Carola Rachete)がイタリア当局によって逮捕されたのだ。特に、イタリアの極右正当で対移民強硬派である副首相兼内相のマッテオ・サルビー二は、ツイッターや記者会見でひたすらこうした救助船を糾弾した。「そんなに救いたいならドイツへ行け。イタリアはNOだ」というような単純明快・かつきっぱりとした断絶のことばを聞いて、なんとも言えない気持ちになったのが先月だったのだ。

(※その後、今月2日にイタリア裁判所は、ラケッテ船長は人命救助しただけだと判断し釈放を命じている。)

 

そんななか、きょうフィガロに出ていたニュース。タイトルは、「移民:イタリアは、人道的な救助船を対象とした新たな政令を採択」。

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内容としては、人道的な救助船に対しての罰則を強化したもので、上院で賛成160,反対57で採択されたそうだ。つまり、マッテオ・サルビーニ側の主張に沿った内容になる。すでに下院で承認されているので、議会の夏休み前の水曜日には有効になるそうだ(あした?)。

 

ニュースとしては、ラケッテ船長の一件がフランスでも連日大きく取り上げられていたが、実は、こうした人道救助船が移民を沖合で助け、それをイタリアへ連れてくる、ということは、それ以外にも頻発している。

 

日本語で読めるAFPの報道だけでも、この一ヶ月でこんなに。

www.afpbb.com

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特に、リビアの戦況が悪化していること、そして、地中海横断は夏が最も多くなることなど、背景にはさまざまな理由がある。

ただ、ひとはどんどん海からゴムボートに乗ってきてやって来ていて、ほっといたら遭難してしまう中で、どうしたらいいのか?でも助けたら助けたで、イタリア国内の反発も起きる。

 

ちなみに、フィガロの記事によると、イタリアでは、サルビーニの内相の「反移民」発言が人気を集めている。先週金曜日に経済誌Il Sole 24 Oreで行われた世論調査によると、彼の政党「Ligue」の指示は39%にのぼり、それ去年の国民議会選挙時のなんと二倍だそうだ。

 

こうした状況について、どう考えるだろうか。

私は、前回記事を書いた40日前、ほんとうに自分のなかで、答えを出せずにいた。でも、そのあと考えていて、状況が複雑になりすぎているけど、やはりこういうときに大事なのはシンプルなことなのではないか。

 

たとえば、第二次世界大戦時、ナチスの弾圧を逃れようとしたユダヤの人々のこと、そして彼らを救おうと動いた人たちを、否定する意見は今日聞かれない。日本では、たとえば、外務省からの訓令に反して多くのユダヤ人系避難民を救った杉原千畝さんの対応は(もちろん内部でのいろいろな対立、価値観の違いが多く残ったとしても)命を救った尊く、本当に勇気のある選択だ。

www.sugihara-museum.jp

 

あとからでは、いくらでも言える。でも、そのとき、その場で、きちんと、判断が出来るのか。現実の難しさを踏まえてなお、シンプルなこたえを、忘れないようにしたいと私は思う。そして、現実の難しさを前にあきらめてしまうのではなく(正直たしかに、サルビーニ氏の主張やそれを指示する市民の意見にも一理あるのだとは思うけれど)、「だったらどうしたらいいか?」を考える方向に社会を向けていく努力が、とても大事だと思う。

 

皆さんは、どう思いますか。