森の日記

見たこと、知ったこと、感じたこと。

結婚

Sと別れて、とてもすっきりした。

一度復縁を自分からお願いした事実は事実だったけれど、

別れて復縁するまでの半年間、

そして、

復縁してから本当にちゃんと別れるまでの半年間、

どちらもあったことで、“彼の存在そのもの“が、自分の中での甘えになっていたことを理解出来たから。

 

彼(恋人)という存在がいないと精神的にぐらぐらしてしまうというのは、それこそ、自分が自分として両足で立てていないからだ、と理解出来た(彼がいようがいまいが、ほかの人とのつきあいには関係ない)し、Sの自分本位な言動に振りまわされるのはもういやだった。

 

Sはわたしを振りまわそうなんてまったく思っていなかっただろうし、彼は彼で必死だったのだと今では思えるけれど。

でも、当時、東北の被災地で、「生きていく」ことだけでも必死な環境で生きようとしている人たちに日々取材を通して接していた私には、彼の『この環境では自分が輝けない』だのという理屈や、周囲を振りまわす言動に、まったく共感できなくなっていた。

生きていられることだけでも本当に有り難いこと。それが五体満足で、お給料をもらえて、帰る家があって、家族全員無事でいることが、どれほど奇跡なのか、と、毎日毎日、考えていたから。

このころのわたしは、取材帰りのバスや電車の中でも、家に帰った真夜中でも、よく泣いていた。自分には帰る家があって、仕事もあって、家族も無事であることに、それと対照的な、現実の厳しさに、気持ちの折り合いがつかなくなっていたのだと思う。

 

〇●゜〇●

Sと別れて、自分としてはすっきりして、男しかいないような職場だったので髪もばっさりと切って、割り切って仕事に向き合うようになった。恋愛なんていらない、と思ったそのスタンスは、わたしにとってはとてもすっきりとしていた。

 

Sがどんな思いで東京駅で紙袋を受け取ったのか、どんな思いでその中身(婚約指輪も、そっと洋服類の間にはさんで返した。。。)を片付けたのか、それは、もう、一生分からない。分からなくて良いと思っていた。

ただ、友だちとして、ひととしてお互い一定の距離をもってつきあって行ければいいと思っていた。 

人間としては尊敬していたから。

そして、自分に愛情をそそいでくれたひととして、いちばん私が不安定だったときにそばにいてささえてくれたひととして、とても大切に思っていたことは事実だったから。

 

〇○●゜〇

 

仕事における精神面は、知らず知らずにどんどん負担がかかっていっていた(それはまた別の話)が、職場の人とはからっとつきあえていたし、恋愛というモノから距離を置いた数年間は精神的にも楽だった。

 

▲▽▲

そのころ。

わたしがSと別れ、仕事に邁進していたころ。

友人Rは、ついにフランス人の浮気性だったボーイフレンドと別れた。というか、新しい彼が出来て、つまり、“乗り換えた”。

それはわたしたち周囲の友人たちとして後押ししていたことでもあったので、わたしたちは喜んだ。相手は、大学時代からRが「素敵」と言っていた、仲の良いグループの中のひとり。Rはわたしと同じく地方に勤めていたので、彼らは遠距離になったわけだけれど、円満ぶりは周囲にも伝わってきていたし、Rはとにかく、ずっと前から憧れていた相手と結ばれて、とても幸せそうだった。

 

 

▲▽▲

 

 

順調にふたりの恋愛は続いていて、彼らは、つきあい始めて3年ほどで結婚に向けた準備を始めていた。

Rはわたしよりも1年早く東京へ異動することになったので、結婚に動く前に、Rはわたしの働く地方に遊びに来てくれて、一緒に旅をした。そしてわたしも、Rが異動して東京にうつる前に、Rの働く地方を訪ねた。

 

Rが結婚することに一抹の寂しさも抱えていたけれど、それよりずっと、素直に、Rに幸せでいてもらえて嬉しい、と思えたし、そういう風に、お互いの人生をより素直に共有できる関係になれていたことを、とても嬉しく感じた。

そう思えたのはたぶん、大学時代のようなちょっとしたライバル関係のような感情からも抜け出て、より純粋にそれぞれの人生を応援し合う関係であると思えるようになっていたからだ。そして、わたし自身、4年近く誰かとつきあって納得して別れたこと(そして仕事に邁進していたこと)で、自らの現状に納得・満足できていたからなのだと、思う。

 

▽▲▽

そして仕事を始めてまる5年がたった2016年の夏。

わたしも東京へ異動することになった。

 

異動してすぐあとの9月に、Rの結婚式が予定されていた。

R自身の入籍はすでに6月に済ませていた(そのころ東京駅でランチしたことを覚えている)ので、何にも問題なく、楽しみな結婚式だった。

 

そんなとき。

わたしと同じ異動のタイミングで、なぜかイレギュラーに同じ東京へ異動となったのが、現在の夫だった。

夫との関係は、これまた別の話だけれど、異動直後に、とんとんと、つきあうことになった。初任地の同僚たちは、日夜問わずに苦楽をともにしていた仲間でもあって、夫とはすでに3年職場でダメなところも良いところもお互いさんざん見ていたし、知らず知らずにお互い共感していたところが多かったから。

つきあい始めたときから自然と結婚の話になった。

前の彼Sと別れたとき、「もしかしたらわたしはもう、誰とも結婚できないのかもしれない・・・」と、本気で思った(それほどSはわたしを許容してくれたから)。

「だったら32歳まで自由に仕事して、その後はお見合いでもしようかな(なんで32歳なのかは分からないけど・・・)」なんて真剣に考えていたので、自然と、気持ちがそんな風に向いていったのは自分でもびっくりだった。

 

Sと別れて2年以上経っていた。未練なんて何もなかった。

 

Rの結婚も楽しみで、自分の結婚も見えてきて、すべて順調そうだった。