森の日記

見たこと、知ったこと、感じたこと。

「フェイクニュース」はこうして生まれる。

今月初旬、オランダで亡くなった17歳の少女がいる。

 

私はたまたま、Twitterの日本のニューズウィークのアカウントによるツイートで知った。「性的虐待の記憶から、17歳の少女が合法的安楽死をした」と。

 

少女の名前は、ノア・ポトーヴェン(ノア・ポトーベン)。若くして複数回の性暴力を経験したという。その苦しみから逃れられず、ついに、合法的な安楽死を認められて、この世を去った、というのが、私が最初に目にしたニュースだった。

 児童虐待や性虐待、性暴力などについて取材をしてきた立場としても、このニュースはかなり衝撃的で、一人でも多くの人に知ってもらうべきなのではないか、と思い、思わずリツイートをしようかと迷った。(しかしけっきょく、リツイートはしなかった。「死」という選択を広げる、もしくは「いいね」という賛同の意志を表明するのは、すこし自分の考えとずれる気がしたから。)

 

しかし、同じ日の数時間後、スマートフォンのニュースページで(これ、いまだよく仕組みがわからないのだけど、定期的にニュースがいくつかピックアップされて表示されますよね???)、フランス・メディアによる「オランダの少女ノア・ポトーヴェンのは ”安楽死"ではなかった」というタイトルのニュースが表示されていることに気づいた。

 

www.lemonde.fr

 

「え??」と思って記事を読んだ。

彼女は、「安楽死を認められず」、結果として、「自分の意志」で、水分や食料を摂取することを拒み、餓死というかたちで亡くなったのだという。

 

当初の「安楽死が正式に認められた」という報道には、いち早くローマ教皇フランシスコが「皆にとっての敗北である」とツイートしたという。

www.vaticannews.va

 

しかし事実は、安楽死を認められず、自分の意志で、「餓死」という苦しい方法を選んだのだ。

 

このニュース、ヨーロッパでも最初に「合法的安楽死が認められた」と報じられたらしい。そのすぐ後に、訂正記事として出されたものを、私はスマートフォンで目にしたわけだ。

 

どれほどのメディアが、それを「フェイクニュースでした」「間違えました」と伝え直したのだろう。

 

このブログを書くにあたって、再度、彼女の名前を日本語でも検索し直してみた。

けれど、検索の上位に出てくるのは、依然として「合法的安楽死が認められた」という報告のニュースばかり。

唯一ブログ系の記事で「フェイクニュース!」と書いているものがあるのみだった。ニューズウィークでさえ、訂正記事はないようだった。(そのまま、トップ検索結果に当初の記事が出ているので。。)

 

これ、「フェイクニュース」だよね??

なぜ、発覚した時点で訂正をしないの?

 

 

百歩譲って「誤報」の事実は仕方がないとして、なぜ、「その後分かった新たな真実」を同じくらいの力量を使って発信しないの???

 

少なくとも、フランス・メディアは、彼女の名前を検索すると、「安楽死ではなかった」というニュースが、ル・モンドをはじめとして、各紙できちんとトップに出てくる。

 

でも。日本は…。こういうとき、きちんとリアクションしないから、メディア不信が募るんじゃないのかなあ。

という、日本メディアの横道に逸れた者のひとりごとでした。