森の日記

見たこと、知ったこと、感じたこと。

フランス、パリ周辺で広がる格差について

きょうは、各メディアが発信していたニュースのなかで、目にとまったものについて。

(私が引用しているのはフランスの公共放送フランス・テレビジョンのローカルニュースを元にしています。)

france3-regions.francetvinfo.fr

 

以下、だいたいの訳。

イル・ド・フランス(パリを含むフランス中北部の地方圏)は、フランスの中で最も不平等な地域であることが、IAU(Institut d'aménagement et d'urbanisme ≓ 都市開発・整備機構)の発表によって分かったそうだ。IAUは2001年から2015年の15年間にわたって住民の収入の変遷を調査した。

ちなみに、イル・ド・フランス圏の人口は1200万人(フランス全人口の18.8%)で、国の収入源の三分の一を算出している。

 

IAUの調査がとくに指摘するのは"一極集中"現象。

富裕化が集中しているのは、パリ(住民220万人)と、パリ西側郊外の一角を占めるオー=ド=セーヌ県だ。

対して、質素な地区のさらなる貧困化と購買力低下が集中しているのは、パリ北東部郊外のセーヌ=サン=ドニ県。そして、セーヌ=サン=ドニ県より少しましだが、パリ南東郊外のヴァル=ド=マルヌ県だという。

こうした社会層の差異化は、とりわけ不動産市場の現状を反映していると調査したIAUは考えている。住居の値上がりが、中低所得者層をパリ中心部から締め出すことにつながっているのだ。

ほかの首都同様、パリも「高級住宅化」が進み、高給取りが人気地区にどんどん移り住んでくることで、結果的に"パリの貧困率の低下"につながっている。IAUによると近年では東・北東部地区(とくに18区)でその現象が顕著だという。

 

まずしい町がどんどん貧しくなっていく一方で、なかには、Agence nationale pour la rénovation urbaine (≓国立都市再開発局)によるプログラムのおかげで住宅提供を多様化したり(特にMeaux, Persan, Mantes-la-Jolie)、建設計画を活用したり(Chanteloup-les-Vignes, Saint-Ouen-l'Aumône)して、貧困化を止めている町もあるそうだ。

 

最後に記事の中では、パリそして取り囲む3県のさらに外側、周辺エリアにおいての状況は良くなってきている、と記している。

昨日記したジレ・ジョヌ(黄色いベスト)のデモが、「"勝ち組"の大都市エリア」と「"負け組"の近郊エリア」の対立をあおっているのに反して、実際は都市の近郊エリアの状況は改善しているのだという。

ジレ・ジョヌの運動が特に目立つ地区であるイヴリーヌ県(ヴェルサイユ宮殿がある)とセーヌ=エ=マルヌ県(フォンテーヌブロー城がある)は、この15年間で貧困率が大幅に減少しているそうだ。

 

 

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貧困化が最も進む、と報告されたセーヌ=サン=ドニ県は、移民たちが暮らすHLM(低所得者層住宅)が集中していることで知られる。フランス人たちのあいだでも、一般的に"治安が悪い”というイメージを持たれるエリアだ。(パリ同時テロ事件の首謀者と考えられている若者、モロッコ系ベルギー人アブデルハミド・アバウドは、事件後にサン=ドニのアパートに潜伏されているのを発見され、射殺された。)

やはり、、、というか、2015年のテロにいたるまでの背景が、証明されたように感じた。移民をめぐるフランスの社会政策はまったくうまくいっていないのだが、その象徴のように思うのだ(これについては後日まとめようと思う)。

 

一方で、ジレ・ジョヌが多く発生しているイヴリーヌ県とセーヌ=エ=マルヌ県が、じつは(ジレ・ジョヌの訴えに反して)経済状況が向上している、という事実も興味深い。ひとはイメージで簡略化して理解しやすいけれど、数字のバックグラウンドに目を向けることの大事さも教えてくれるように感じられるからだ。

 

きょうは、ここまで。

また明日。